新年明けましておめでとうございます

居心地が良すぎた卵

   3年前まで毎年ツバメが来ていました。
  母は毎年ツバメが来ると、朝早くからツバメたちのために戸を開けていました。
  その母が入院した年は、その付き添いのために、店を閉めることが多く、ツバメのために誰もいない店のシャッターと戸を開けてやることができないと思い、ツバメが来る前から入れないように隙間なく戸を閉めっぱなしにしていたので、姿を見ることもありませんでした。


  母はその入院の後に亡くなりましたが、私たちは次の年も、その次の年も、ツバメのために戸を開けてやることをしなくなっていました。


  最近、ツバメの巣がくっついたままだった電灯が点かなくなったので、業者さんに来てもらったところ、巣に残された孵れなかった卵が1個、静かに居ました。


  いつからそこに居たのか…大空を飛ぶことより、殻の中の居心地が良すぎたのか…長いこと一人ぼっちでいたのに、誰にも気づかれることがなかったツバクロー(母が付けた呼び名)の子。


   せめて、大空の夢を見ながら眠れていますように。